作品解説
フリーア美術館秘蔵の名品にして光琳芸術世紀の傑作、ついに復刻
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ワシントン・フリーア美術館所蔵
シルクスクリーン・振金技法
『群鶴図』 尾形光琳 筆
■日本美の完成形、その典型ともいえる「琳派」の世界
琳派の完成者にして、不世出の天才絵師・尾形光琳。国宝「紅白梅図屏風」や国宝「燕子花図(かきつばたず)屏風」を筆頭に歴史的名画を数多く描き、国内のみならず海外の美術館でも今なお多くの光琳ファンを魅了しています。
そしてこのたび、その光琳ファンが長年待ち望んだ、フリーア美術館の代表的名品と名高い『群鶴図』(六曲一双屏風)の精緻な復刻作品が完成いたしました。
■『群鶴図』が“国宝二作品の原型”と呼ばれる理由
右隻に十羽、左隻に九羽、微妙に重なり合いながら並ぶ同じフォルムの連続。それはまるで視覚に響く旋律のよう。鶴の配列が奏でる美の五線譜。そして、この構図から、わが国に残る光琳の歴史的代表作「燕子花図屏風」にその芸術性の共通点を見いだすことができます。また、金地の背景に横たわる流水の形態と渦の表現には、同じく代表作「紅白梅図屏風」の中心に描かれた川の表現の原型と言える技法が施されています。その意味で本作品は、構図は国宝「燕子花図屏風」へと、背景は国宝「紅白梅図屏風」へと展開していく、まさに光琳芸術の基点と言える歴史的な作品でもあるのです。
あまりの名品ゆえに、復刻作品さえ少なく、これまで“幻の名品”と言われてきた本作品『群鶴図』。
ぜひこの機会にご所蔵いただき、日本が世界に誇る琳派芸術の粋を集めた世紀の傑作をお手元で存分にご鑑賞ください。
■『群鶴図』その大いなる魅力と特徴、光琳が仕掛ける“視覚のトリック”。
千年の長寿まで添い遂げると言われる瑞鳥「鶴」を、本作品では、流水に集い遊歩する姿が、流れるように優美な曲線を基調にしたスマートさと気高い品格を湛え、光琳らしい意匠性をもって見事に描かれています。光琳ならではの大胆な金地の余白と流水のくねるような曲線によって、横並びの鶴たちがくっきりと際立ち、瑞鳥の神々しいまでの気品が一面に漂っています。そして、本作品の最大の特徴は、斜めから正面へと鑑賞する位置を変えて見ることで、背景の金色が変化し、同時に流水と鶴の群があたかも右から左へ、左から右へと実際に移動しているような感覚を誘うところにあります。動くはずのない画面を、鑑賞者の錯覚を利用して動かしてみせる光琳の巧みな意図を堪能できる醍醐味も見事に再現しています。
■熟練の職人達が光琳の芸術世界を極限まで見事に復刻
シルクスクリーンの伝統的技法を駆使し、さらに熟練の職人による蒔絵における「振金」技法を施すことで、琳派独特の金色地の質感を極限まで再現することに成功しています。
【フリーア美術館】フリーア美術館の創設者、チャールズ・ラング・フリーア(Charles Lang Freer
1854〜1919)はアメリカで鉄道会社を創りあげた直後、事業家を引退し美術蒐集に捧げた人物です。その彼の名を冠したフリーア美術館の収蔵作品には本作『群鶴図』の他にも俵屋宗達「松島図」、狩野芳崖「観音」、葛飾北斎肉筆「富士と笛吹童子」などがあります。
【保証】
額装は額裏に軸装は桐箱蓋裏に正統な手続きのもと制作された証である奥付シールが貼布されています。
作品詳細情報